アメリカのサイバー犯罪例にみる現代的リスクと対策の在り方

(出典:DWIH Tokyo「ICT FOR RESILIENT, SAFE AND SECURE SOCIETY」)

​​―初めに​ 

​​「ICT」と聞いて人は何を想像するだろうか。きっと「生活を豊かにする」や「画期的」「新しい」「便利」などというポジティブなことを考えるのではないだろうか。確かに現代社会において、ICTは必要不可欠なものとなっていて、教育・政治・経済・ビジネスなど様々な分野に普及し社会活動を活性化している。​  

​​しかし、ICTは社会との結びつきが強い分、犯罪というネガティブな要素との関連性も強い。私達はこのICT普及に伴い増加傾向にある犯罪を、認識し対処していく必要性がある。​​この記事ではアメリカにおけるICTと犯罪について紹介する。​ 

 ​―アメリカにおけるサイバー犯罪​ 

​​アメリカでは年間で平均約652,000件もの被害が報告されていて、2021・2022年には80万件を超える被害が報告されている。​ 

(参照元:INTERNET CRIME COMPLAINT CENTER, “FEDERAL BUREAU of INVESTIGATION Internet Crime Report 2022.” P7より作成)

​​これらのデータは、IC3(サイバーに関するさまざまな苦情を受け付け分析し、FBIなどとも連携し防犯に役立てている機関)に報告があったサイバークライムの件数と被害額であるため、実際にアメリカで起こっているサイバークライムの一部にしか過ぎない。報告されていないものも含めるとさらに多くの被害があると考えられる。​​サイバー犯罪は決して新しい事例ではなく、確実に対処するべき問題なのである。​ 

​​―実際にアメリカで起きた事件​​ ​ 

​​1.​ ​サイバー被害の米パイプライン(BBC)​ 

​​2021年5月7日、アメリカ国内最大の石油パイプライン(コロニアル・パイプライン)がサイバー攻撃(ランサムウェア)を受け、5日間の操業停止に追い込まれた。​​この事件は、サイバー犯罪集団「ダークサイド」によるもので、約100ギガバイトのデータが盗まれ身代金約4.8億円を支払うこととなった。​ 

​​2.ツイッターのハッキング (BBC)​ 

​​2020年7月15日、米著名人のツイッターアカウントが多数ハッキングされた。これは、仮想通貨ビットコイン詐欺を目的としたハッキングであった。事件を担当したウォーレン検事によると、仮想通貨が詐欺で盗まれた場合に追跡して回収することは困難であった。驚くべきことに、犯人は未成年を含む3人のハッカーによるものであった。​ 

​このように個人情報などの被害から、国家運営を脅かすレベルでの被害もICTは可能にした。また知識と環境さえ確保していれば、年齢やTPOに関係なく、また驚くほど短い期間で誰もが犯罪を起こすことができるのである​​。

​​―まとめ​ 

​​これからもICTが発展し人々の生活へと浸透、普及していく上で犯罪との関係性は深まっていくだろう。​​​​​​​​一方で、この問題は世界的に見てもまだまだ十分に対処しきれていなかったり、話題にすら出ていないケースもある。それは、ICTがあまりにも便利でその危険な部分を人間は見ないようにしているからだと考えられる。​​しかし、ICTの利便性に伴った犯罪への責任を立法や司法が担っていく必要性や、この問題に国としてだけでなく個人や企業もいち早く気づき迅速に対応していく必要性を、「便利だから」という一言で無視してはならない。​​​​しかし、ICTの利便性に伴った犯罪への責任を立法や司法が担っていく必要性や、スマホやPCなどへのセキュリティアプリの導入や専門家への相談などをして、個人や企業が迅速に対応していく必要性を、「便利だから」という一言で無視してはならない。​​​ 

―参考文献 

INTERNET CRIME COMPLAINT CENTER, “FEDERAL BUREAU of INVESTIGATION Internet Crime Report 2022.” (2022) https://www.iafci.org/app_themes/docs/Federal%20Agency/2022_IC3Report.pdf

BBC NEWS JAPAN「サイバー被害の米パイプライン、身代金4.8億円の支払い認める 米紙報道」(2021年5月20日)https://www.bbc.com/japanese/57181463 

BBC NEWS JAPAN「ツイッターのハッキング、「高校卒業したて」の少年ら3人訴追」(2020年8月1日)https://www.bbc.com/japanese/53609855