2022年8月、米国コロラド州で開催され美術品評会で優勝した、画像生成AIが生成した絵画「Theatre D’opera Spatial(宇宙のオペラ座)」をめぐって「AI芸術」の論争が盛り上がっていた。
この作品について、「芸術に対する侮辱ではないか」、「ハイテクによる盗作にすぎない」など批判する声もあれば、AIの創作力に対すに対する褒めの声 もあった。確かに、AIを用いた芸術作品の発展は芸術家やクリエイターにとって将来への不安を引き起こすものであるが。
しかし、AIが芸術を創造する能力を持つとしても、芸術作品が価値を持つのは単に技術的なスキルだけ、その芸術性はそこに見えない。この点に関して京都造形大学の千住博教授は 「芸術とは、イマジネーションのコミュニケーションです。自分のイマジネーションを、なんとかして伝えようとする(コミュニケーションしようと思う)その心が生み出すもの。これがあるものは全て芸術なのです…」としている。つまり、芸術は、感情や思想、創造性、表現力など、人間の経験や感性に根ざし、作者の個性や独自性、社会的な意味やメッセージを心から伝えるものである。今の時点、自己意識、感性が持っていないAI は 人のために動くツールに過ぎない。
一方で、これらのAI画像生成ツールを活用して自分のコンテンツを作る作者達は既にネット上で出てきた。AIで作ったイラスト、漫画、音楽、ゲームなどは驚くほどのスピードで私達の視野に入ってくる。
例えば、pixiv(ピクシブ)というイラスト・漫画・小説の投稿や閲覧が楽しめる「イラストコミュニケーションサービス」では、最近は「AI作品だらけになって汚染されている」という問題が炎上している。その問題の原因として、AI絵のクオリティが高く、初めて絵を描く人でも簡単に使えるため、多くの人が利用していることが挙げられている。プロではないと見分けることができないレベルである。 最近、pixivは、「AI作品をマーク付き、同じような作品を見ない」の設定ができるようになってきた。
さらに、AI技術で生成したアニメ「Anime Rock, Paper, Scissors」はYouTubeで400万回近いの再生数があった。批判が多かった以前のゲームやイラストとは違い、 このアニメを楽しむ人が逆に多くなり、「想像以上にこえた」、「アメージング」、「続きが見たい」など、コメントから見ると、人がAIで作ったクリエイティブな作品を楽しめる様子が見える。
イラストとは違い、このアニメを楽しむ人が逆に多くなり、「想像以上にこえた」、「アメージング」、「続きが見たい」など、コメントから見ると、人がAIで作ったクリエイティブな作品を楽しめる様子が見える。
今の段階では、AI生成技術は未熟な技術だが、毎日恐ろしいほどのスピードで発展し続けていることが見える。先週(6月23日)、海外のAI絵画大手MidjourneyとStable Diffusionの2社がほぼ同時にアップデートされた。 Stable Diffusion XL 0.9 がリリースされ、新しいバージョンで生成される画像はよりリアルでテクスチャーが増し、人間の5本の指を正確に生成できるようになった。Midjourney5.2では、カメラのようにズームしたり、画面の細かいところを充填したり、スタイルをカスタマイズしたりできるようになっている。また、「Zoomout」という新機能により作れた画像を見て、リアルタイムで進化していることが実感できる。将来成熟期になって、他の人より数倍以上の効率でゲーム、マンガ、イラストなどを生成できる時に、私たちの未来は、AIによって生成された作品に囲まれた日々を過ごすかもしれない。
参考資料:
1.朝日新聞:「AIで描いた絵はインチキ?! 美術コンテストで1位受賞、芸術論争に」(2022年10月18日)<https://globe.asahi.com/article/14751645>(2023年6月10日アクセス)
2.HILLS CAST:「芸術とはコミュニケーションであり、都市の必需品である」2010年02月12日<https://www.mori.co.jp/company/ad/radio_archives/hillscast/2010/02/20100212111000001848.html>(2023年6月10日アクセス)
3.ANIME ROCK, PAPER, SCISSORS(2023年2月27日):https://www.youtube.com/watch?v=GVT3WUa-48Y(2023年6月10日アクセス)
4.Midjourney:< https://docs.midjourney.com/docs/zoom-out>
5.Stable Diffusion:< https://ja.stability.ai/stable-diffusion >